古い家を解体して、新しい家を建てる、そんなとき必ず困ってしまうのが、植木の扱いです。
長く大切に手入れしてきた植木。でも新しい家を建てる際に、足場や搬入の障害になってしまう、出入りの植木屋さんに預かってもらおう...。
しかしここで幾つかの問題があります。
植木を預かるには当然畑やナーセリーなどのスペースが必要になります。しかし昨今仕事場の直ぐ近くに畑や置き場を持っている業者さんは多くありません。
遠くでもいいから預かっておいて欲しい、となってもこの費用が結構かかってしまい、結局は新しい植木を購入したほうが安く済む、ということになってしまいます。
でも、自分が生まれたときに記念に植えられた木には思い出や思い入れがたっぷりあります。誰かにプレゼントされた木なら尚更のこと。
「あの木はおばあさんが生まれたときに植えたんだよ...」そんな会話ができると良いですね。でも予算やスペースの関係もあり、残しておくのは難しい...。
そんなお話が多く持ち込まれるようになりました。
最近はそんなお話があると、挿木、接木、挿芽をお奨めしています。これらの技術によって、思い出のある木をサイズダウンして、新しい家にお引越しさせてあげることができます。
この画像は親木から枝や芽を採取し、台木に接ぐ作業風景です。この現場では樹齢50年くらいのソメイヨシノを接木しています。
大きなソメイヨシノが6本の苗木になりました。
やがて新しく建った家のお庭に移植。小さくて分かり難いのですが、真ん中右上あたりに植えました。
こんな感じです。残り5株は親戚の家にもらわれていきました。
昨年緑を考えるワークショップに参加した際に、「屋敷林は売却後は伐採されてしまう。後にはマンションが建つので、緑の面積と人口密度は反比例する」ということを知りました。環境を守る、長く育った樹木を生かすことは大切なことですが、経済という現実があるのは紛れもない事実。
屋上緑化などの技術で緑の面積を増やしていく一方、伝統的な技術の力を借りて、長く生きた植物の遺伝子を残していくことも、大切なことだと実感しています。何よりも思い出がしっかり残っていく、ということが素敵なことですね。
費用は色々ですが、技術料と養生で5万円程度です。樹種や預かり期間によって異なるので、詳しいことはお問い合わせ下さい。
最近のコメント