二人の社員が田園調布沿線に住んでいて、先日の雪による遅延というか通勤災害に見舞われた。
一人は電車で4時間かけて出社してくれた。
途中何度も「今日は休んでいいよ」とメッセージを送ったのだけど「今日はミーティングがありますから」と出社した。
こいつは筋金入りの真面目人間で、大雨の時にも工事を延期せず、電動工具をダメにして怒られた経験を持つ。
もう一人は、二人の子どもを保育園に送った後、出勤途中に連絡が取れなくなった。
こっちにも「今日は休んでいいよ」とメッセージを送ったが、連絡が取れない。
心配してヤキモキしていたら、3時間後に頬を真っ赤にして会社に現れた。
歩いて会社まで来たという。
やはりミーティングのことが気になっていたらしい。
社員は4人いるのだけど、一番近くに住んでいる若い者は、普段自転車で通勤しているところを、歩いてやってきた。
3時間はかからないが、結構な距離だ。
最近入社した女性は一番遠くに住んでいる。
彼女は会社に長靴を置いてきたことを前日に気づき、わざわざホームセンターで長靴を買って、大雪の準備をしてきたらしい。一番遠くに住んでいるのに、一番早く出社してきた。
「みんな真面目だなあ、偉い、偉い」と言って褒めたら、誰かが「勤め人としては、常識だと思います」ときっぱり言う。
他の三人も「そうだ、そうだ」という風に頷いた。
彼らの静かな迫力に、ジョーシキのないシャチョーは少し後ずさりしてしまった。
予定より3時間遅れで始まったミーティングの後、みんなで楽しく食事をした。
何のことはない食事だったけど、とても美味しくて、楽しい食事だった。
食事のあと、皆の姿が消えた。
「どうしたのかな」と思っていたら、事務所のある集合住宅の駐車場の雪かきを、全員でやっている。
あっという間に雪が片付いて、ご近所さんが喜んでいた。
その日は早めに帰るように言ったら、皆素直に定時に上がるというので、珍しく皆を見送った。
帰る間際、3時間かけて歩いて来た社員が「今日はミーティングがあるので絶対出社しないと、と思ってました。頑張って来た甲斐がありました」と疲れた色も見せず、ハツラツと会社を後にした。
雪、様様な一日だった。
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