この暑さのなか、両陛下がエアコンの利用を控えられているという記事を見た。
きかっけは東日本大震災の電力不足、計画停電だという。
手元に「国立博物館専報第34号ー皇居の生物相Ⅰ.植物相ー」がという本がある。
1997年から3カ年にわたって行われた「皇居の生物相に焦点を当てて把握するための調査・研究」のなかから、植物についてまとめたものだが、この内の「人工衛星のデータを用いた皇居の植生分析」が興味深い。
「皇居の植生を全体的に把握すると共に、10年前と現在の植生を比較するため、植生の生長活力および植生表面の熱環境を、人工衛星ランドサットとイコノスのデータによりリモートセンシングの手法を用いて調査、解析した」というこの資料は、皇居および皇居周辺の熱環境が周囲を囲むオフィスビル群に比較すると格段に低いということを示している。
吹上御所の緑が作り出す冷気は、御所そのものだけではなく、御所の周辺に流れ出し、ビル群を冷ましていることも分かった。
同時にこの資料は、1987年に比べて1997年の10年間で、吹上御所の森林の元気さが10年で失われたという傾向も明らかにしている。原因については書かれていないが、環境負荷の増大や、森が成熟することによって更新が必要となっているということもあるかも知れない。必要な管理を行えば元気を取り戻せるのだろうか?
明暦3年(1657年)の大火災後造成された庭園が、幾多の変遷を経て昭和天皇、香淳皇后のゴルフ場として使用され、その後「庭園的」な管理が行われなくなった結果野生種が繁殖し、武蔵野の自然の様相となった。これが現在の吹上御所だ。
その管理方針には昭和天皇の意向が強く反映されたという。
前回の調査から20年近くが経過した。
都市環境が過酷に変化するいま、1997年の時点で既に失われていた吹上御所の緑の元気さが、今も徐々に失われるつつあることは間違いないだろう。
両陛下がエアコンの使用をお控えということについて、それが可能なのは吹上御所の緑の効能もあろうとの論調もあった。
コンクリートの蓄熱棟に比べれば格段にお過ごしいなりやすいだろうが、徐々に元気を失いつつある緑の冷却効果は低下していることも考えられる。
この続きを大いに期待し「国立博物館専報第49号ー皇居の生物相Ⅱ.植物相ー」を購入したが、最も期待していたこの調査は掲載されていなかった。
おまけに「皇居のコケ類」及び「皇居における地衣類多様性の増大」が英語表記で、残念ながら理解できない。英語は私の勉強不足なので仕方ないけど、「人工衛星のデータを用いた皇居の植生分析」の続編をどうしても知りたい。何とかなりませんかね?
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