近年、気候変動による局地的豪雨が原因の被害が頻発しています。「バケツをひっくり返したような」とは局地的豪雨には情緒的な表現で、実際はあまりの激しい雨に恐怖すら感じることがあります。アスファルト舗装の増加と緑被率の減少によって、地下の排水溝のキャパシティを超えた排水が、街を水浸しにする光景は珍しくなくなりました。深刻な事故が起きたこともあります。
減少した緑を補う屋上緑化ですが、都市型局地的豪雨に対する緩衝効果はあるのか、検証してみたいと思います。
面積100㎡、土の厚み300mmの屋上緑化があったとします。
ここでゲリラ豪雨のことについて気象庁のお天気相談所に電話し、「ゲリラ雷雨のことでお尋ねしたいのですが...」と話した途端に「気象庁ではゲリラ豪雨という言葉は使っていません」とかなりきっぱり言われてしまいました。失礼しました。正確には「局地的豪雨」と呼ぶそうです。
過去のデータから、局地的豪雨に似た記録を探し出してみます。降雨量は「24時間最大降雨量」「時間あたり最大降水量」「10分あたり最大降水量」のデータが参照できますが、ここでは観測史上最も多い10分間で35mmの降雨量(1966/ 6/ 7)が降ったと仮定します。(観測地点は東京)データは下記のページを参考にしました。
屋上緑化がない場合は、降雨はそのまま屋上からドレイン(排水口)に集約されて建物の外に排出されます。(下水道を通って川に流れ、やがては海へと...)
アクアソイル工法で緑化した屋上緑化がある場合、降雨は一旦屋上緑化に浸透し、排水設備を通って地下の排水溝に流れ込みます。アクアソイル内での排水のスピードは、豪雨に見舞われる前の状況によって異なりますが、ここでは長雨が続いた後で、更に豪雨に見舞われるという最も厳しい条件で検討してみましょう。
アクアソイルの飽和透水係数(アクアソイルが十分な水分を含んだ状態での排水性)は以下の通りです。
8×10-3cm・S-1
これを分かりやすい単位にすると
8×0.001=0.008cm=0.08mm
0.08mm/s
つまり1秒間に0.08mmのスピードで浸透する、ということになります。
これを先ほどの気象庁のデータに合わせるために、10分ごとになおすと、以下のようになります。
0.08×60(分)×10=48mm
10分間で48mm浸透する、つまり10分で35mmの降雨でも植栽基盤はオーバーフローしない、ということです。
その後降った雨は300mmのアクアソイルを、48mm/10分=0.08mm/sで浸透していきます。
300÷0.08=3750 3750÷60=62.5分
つまり、降った雨が即そのままドレインに流れ込むただの屋上に対して、屋上緑化は1時間以上の時間を稼いでドレインに流れ込みます。
植栽基盤には排水口があるので、貯水機能という表現は正確ではありませんが、都市型局地的豪雨をバッファする機能としては、十分な機能を発揮することがお分かりいただけると思います。
屋上緑化が都市型局地的排水に伴う地上部の排水不良を解決する手段になる、ということは以前から言われたことです。その点からも屋上緑化が増えて欲しいものです。十分な厚みを持たせる事で、その効果はより顕著になるでしょう。
勿論機能ばかり追求するのではなく、環境改善に貢献する植栽であれば言う事はありません。
このような大規模な屋上緑化があると、地上に流れ出す排水をかなりの時間抑制できます。植栽が多様で、その点でも素晴らしいと思います。
株式会社サカタのタネ本社/建築設計:株式会社日本設計/ランドスケープデザイン:プランタゴ
植栽基盤施工:株式会社イケガミ
最近のコメント