職方の寺島篤君(庭樹篤半)から相談が舞い込んだ。
「川越で草屋根をやりたいというお客さんがいるので相談に乗って欲しい」という。
職方が仕事を持ってきてくれるなんて、こんな嬉しい話はない、と二つ返事。(会長、満面の笑顔で大喜び!)
しばらくして寺島君がもう一人の職人さんを連れて事務所にやってきた。
彼らの話によると、川越の不動産業者さんから、身内の大工さんに「事務所の屋根を草屋根化したい」という相談があり、それが廻り廻って寺島君に繋がったという。
寺島君は同じく職方の樋口君(庭色樋口)のテクノホルティ園芸学校の後輩で、イケガミの仕事をとてもよく助けてくれる職方。(因にイケガミの小口和義君もテクノホルティ園芸学校。)
草屋根工事にも積極的に参加してくれ、とくに「都町の家」(設計:矢田義典/矢田義典設計室)では私のサブとして、草屋根工法のベース工事に協力してくれた。写真右端が寺島君。
その他にも「茅ヶ崎学園フィートリッヂ緑が丘保育園」や「唐木田菖蒲館(唐木田コミュニティセンター、設計:株式会社新居千秋都市建築設計)」といった難易度の高い工事に積極的に参加してくれている。
そんな寺島君の持ち込んでくれた話なので、心の中で赤いカーペットを敷きお出迎え。
社内でも話題沸騰(とは言ってもほんの数人)、是非是非やりましょう、ということになった。
本来なら、彼らが請け負って材工で仕事をすべきところ。
しかし寺島君もまだ自信がない、というので、ならば現在進行中のキット販売方式でやってみよう、ということになった。
ちなみにキット販売には、大きく分けて三つの方法がある。
パターン1 セルフビルド
発注者が資材を購入し、自分で施工する。狭い面積で下屋や玄関ポーチなど比較的低い場所であれば可能。
パターン2
発注者が資材を購入し、業者が施工する。面積が広い場合や、高所での作業となる場合に向いている。
パターン3
パターン1、パターン2のいずれかに、施工指導を行う。屋根形状が多少複雑な場合や、責任施工並みの仕上りが期待できる。(責任施工のように保証はつきませんが、草屋根工法自体は漏水やトラブルの要因を考えられる限り排除しているので、心配は無用です。)
今回の場合、寺島君がある程度施工に慣れているとはいえ、ケラバ側の納まりなどが未定の場所もある。また、仕事の窓口になった造園屋さんの仲間も集まるので、講習の意味合いも込めて、パターン3で草屋根を施工することになり、金大の原社長にも快く了承していただいた。
迎えた当日。
寺島君と取りまとめをする鈴木隆志さん(鈴木造園)を初めとして6人が集合。
皆さん真面目でやる気があり、とても良いチーム。しかも皆若い。
建設業従事者の高齢化が問題になっているが、別の世界の話のようだ。
朝礼、RA活動の後施工開始。
4tユニックを持っている人がいて本当にラッキー。弊社関根の施工指導のもと、順調に施工が進む。関根はアルバイト時代から草屋根工事を経験しており、つい先日も大府市のY邸(設計:倉橋友行/倉橋友行設計室)で現場責任者を務めているので、今回は独り立ちのテストも兼ねて、殆ど口を出さないことにしたのだ。
これが本人にはプレッシャーらしく、時折ミーアキャットのようにこちらの顔色をうかがっているのが面白い。無理もないよな、まだ二年生だし。
金網の取付状況
アクアソイル育成用の敷設状況
最後に仕上りの写真を撮ることに。誰かが「社長、ユニックのバケットに乗って撮影したらどうですか?」というので、お言葉に甘えて人生初バケットで、屋根の横から撮影。
もう少し引きがあると良いのだが、後ろに電線もあるので今回はこの程度でご勘弁下さい。(ホントは高所恐怖症でこれ以上高くできなかった…カメラ付きドローンが欲しい!)
発注者の有限会社金大、原紀明社長も大満足。
更に喜ばしいことに、この草屋根は川越市の屋上緑化助成第一号に認定された。
場所は川越市の埼玉県道39号川越坂戸毛呂山線沿い。直ぐ先には川越の古いまち並みがある。
草屋根がきっかけになり、この通りの景観が良くなるといい、というのも発注者の願いであったので、この助成の意義は大きい。
最初の草屋根工法の発注者が、「これからは植木屋も草を植える時代になる」とおっしゃってから、12年が経った。(画像は最初の草屋根工法の施工風景)
今こうして若い職人が嬉々として草屋根工法に携わっているのを見ると、あの言葉が現実になりつつある、と感慨深い。
さあ、準備は整った。草屋根工法は次の段階に進む。
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